Cat Bond

キャットボンドとは

地震や台風などの大規模自然災害リスクを資本市場に移転するための金融商品、キャットボンド(大災害債券)について解説します。

キャットボンドの仕組み

企業の災害リスクをSPVを通じて資本市場の投資家に移転する構造

1

リスク移転契約の締結

企業(スポンサー)は、地震や台風などの大規模災害リスクを移転するため、金融機関を通じてSPV(特別目的会社)とリスク移転契約を締結します。

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SPV設立・キャットボンド発行

バミューダやケイマン等にSPVを設立し、キャットボンド(債券)を発行。機関投資家(年金基金、ヘッジファンド等)に販売し、調達資金は大手国際金融機関の担保口座で安全資産により運用されます。

3

期間中の補償料・クーポン支払い

スポンサーは四半期ごとに補償料を支払い、SPVを通じて投資家にクーポン(金利)として分配されます。担保資産の運用利回りも投資家に支払われます。

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災害発生時の支払い / 満期時の償還

支払判定トリガーが基準値を超えると、担保資産が現金化され3か月以内にスポンサーの指定口座に入金されます。災害が発生しなければ、満期時に投資家へ元本が返還されます。

ストラクチャー図解

キャットボンドのライフサイクルを5つのフェーズに分けて、分かりやすく解説します。

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従来の保険との比較

キャットボンドが企業にとって優れている理由

比較項目 従来の保険 キャットボンド(パラメトリック型の場合)
リスクの引受先 保険会社(相対取引) 資本市場の多数の投資家
信用リスク 保険会社の信用力に依存 担保口座で全額担保(完全担保型)
契約期間 通常1年(毎年更新) 通常3〜5年(複数年の安定した補償)
支払いトリガー 実損填補(損害査定が必要) パラメトリック型(客観指標で自動判定、損害査定不要)
支払いまでの期間 損害査定完了後(数か月〜年単位) 原則3か月以内(迅速な資金供給)
資金使途 契約時に指定する特定損害に対する補填のみ 使途制限なし(復旧・復興費用、運転資金等に自由に充当可能)
手配可能規模 保険市場の引き受け余力に依存 150億〜1,000億円相当規模の大規模手配が可能
価格決定方式 保険会社との交渉ベース ブックビルディング方式(多数の投資家による透明な価格決定)

パラメトリック型 vs 実損型

キャットボンドの支払いトリガーの比較

比較項目 パラメトリック型 実損型(インデムニティ型)
支払い判定 災害の規模・強度を示す客観指標(マグニチュード、最大加速度等)で自動判定 実際に発生した損害を査定して判定
損害査定 不要(観測データに基づき自動計算) 必要(損害額の確定に時間を要する)
支払いスピード 原則3か月以内 損害査定完了後(数か月〜年単位)
資金使途 制限なし(あらゆる用途に充当可能) 契約時に指定した特定の損害に対する補填に限定
間接的・波及的被害への対応 資金使途が自由なため、直接被害だけでなくサプライチェーン寸断・売上減少・復旧長期化等の波及的被害にも充当可能 保険契約で定められた特定の損害のみ補償
ベーシスリスク あり(実損と支払額に差異が生じる可能性)。ただし大規模災害では包括的補償のメリットが上回る なし(実損に基づき支払い)
透明性 観測データは公開され、第三者が検証可能 損害査定プロセスに時間と交渉を要する
企業向けの適性 多様な波及的被害が想定される大規模災害に適する。事業会社向けの主流 保険契約の延長として使いやすい。保険会社向けに多い

ベーシスリスクは大規模災害への包括的な備え

パラメトリック型の特徴には、実際の損害額と支払額の間に差異が生じる可能性(ベーシスリスク)があります。しかし、この特徴は大規模災害においてはメリットにもなることがあります。

実損型は「実際に確認された損害」のみを補償するため、被害の全容が判明するまで支払いが遅れ、かつ契約時に指定した保険の対象となる特定の損害に限定されます。一方、パラメトリック型は災害の規模に応じて支払いが行われ、資金の使途に制限がありません

大規模災害では、直接的な物理的被害に加え、サプライチェーンの寸断、売上の減少、社会インフラの停止、経済の低迷、人手不足や資材高騰による復旧の長期化・費用の高騰など、予測が難しい多様な波及的損害が発生します。パラメトリック型キャットボンドは、こうした保険ではカバーしにくい間接的・波及的被害を含む多様な損害にたいするリスクヘッジの手段として機能します。

企業にとってのキャットボンドのメリット

従来の保険にはない、企業の災害リスクファイナンスとしての優位性

損害査定が不要

パラメトリック型では、災害の規模・強度を示す観測データに基づき支払いが自動的に判定されます。保険のような損害査定プロセスが不要で、迅速な資金確保を実現します。

資金使途が自由

保険と異なり受取資金の使途に制限がありません。建物の補修、逸失利益の補填、サプライチェーンの再構築、従業員支援など、状況に応じた最適な資金配分が可能です。

迅速な支払い(3か月以内)

支払トリガーが充足されると、原則3か月以内に指定口座へ入金されます。発災後の事業継続に必要な資金を早期に確保できます。

大規模な資金調達

多数の機関投資家が参加するため、150億〜1,000億円相当規模の大規模手配が可能です。保険市場だけではカバーしきれない規模のリスク移転を3年~5年の長期に亘り実現します。

完全担保型で信用リスクなし

投資家の出資金が信託口座に預けられるため、再保険会社や保険会社の破綻リスク(信用リスク)がありません。大規模災害時にも確実に支払いが行われます。

アナウンスメント効果

キャットボンドの発行は市場の注目を集めやすく、災害対策の積極的な導入が株主や投資家の評価向上につながることが期待できます。

キャットボンド発行フロー

社内決裁後、発行準備から完了まで約3か月のプロセス

1

事前準備

基本方針決定

社内検討・意思決定

フィージビリティスタディ

コスト見積もり・リスク事前分析

2

発行準備

約2か月

SPC設立

バミューダ等に特別目的会社を設立

リスク分析・ストラクチャリング

災害モデリング・インデックス設計・条件設計

契約書・発行書類作成

法務アドバイザー・サービスプロバイダー選定

3

実行段階

約1か月

投資家への案件通知

取引のアナウンス

ブックビルディング

投資家募集・価格決定

発行・クロージング

決済・担保口座への資金預入

合計:約3か月(発行準備 約2か月 + 投資家募集〜クロージング 約1か月)

※ 2回目以降の発行では、既存のSPC・契約書を活用できるため、準備期間が大幅に短縮されます。

活用事例

キャットボンドはさまざまな業種のお客様にご活用いただけます

大規模地震への事前対策

南海トラフ地震や首都直下地震に備え、事業拠点の被害に連動するパラメトリック・インデックスを設計。発災後短期間で多額の資金が供給され、復旧・復興戦略の柱となります。

波及的被害への備え

物理的な直接被害だけでなく、サプライチェーンの寸断、売上減少、資材高騰、人手不足による復旧長期化など、保険ではカバーしにくい波及的被害にも対応する資金を確保できます。

BCP(事業継続計画)の強化

操業停止期間中の固定費負担をカバーする資金を事前に確保。借入れなどの事後的対応に頼らず、発災後の競争力維持に寄与します。他社に先駆けた対策導入は株主評価の向上にもつながります。

ピークリスクの移転

地震や台風のピークリスクエクスポージャーを効率的に資本市場に移転し、再保険プログラムの最適化を図ります。

再保険キャパシティの補完

再保険市場のキャパシティが不足する局面でも、キャットボンドで補完することで安定的な引受能力を維持できます。

資本効率の改善

リスクを資本市場に移転することで、規制資本の効率化と格付け機関からの評価向上を実現します。

大規模災害への備えを
ご検討ください

キャットボンドによる災害リスクファイナンスにご関心をお持ちの企業様は、お気軽にお問い合わせください。